産地と産業の空洞化
現在、国内では旭川(北海道)、静岡(静岡)、飛騨(岐阜)、府中(広島)、讃岐(香川)、大川(福岡)などが一大産地として挙げられ、その周辺にたくさんの木工所が点在します。
タンス、とりわけ桐箪笥は日本各地で作られ、規模は大きくありませんが桐箪笥で有名な加茂 (新潟)、時代金具のついたタンスでおなじみの岩谷堂 (岩手)と仙台(宮城)などがありますが、かつてはタンス職人が自分で作り、自ら販売していました。
街の古い家具屋の屋号に「○○タンス店」とあるのはその名残です。
時代の流れでしょうか、遅まきながら家具業界も他の工業製品と同様に国内産業の空洞化が進み、ソファやベッド、ダイニングといった洋風家具だけでなく、座敷机やこたつ、座椅子といった和家具においても海外へ生産拠点を移してきました。今や流通する家具の 60%以上が海外産または海外でパーツを作り国内で加工した輸入加工品です。
主な生産地は中国、台湾、タイ、マレーシア、ベトナム、インドネシアなどの東南アジアです。
以前は輸入品といえば品質的に国産と比べ著しく劣るのが否めませんでしたが、現在では決して見劣りしません。
いえ、それどころか国産と見分けが付かないほど優れた商品が出てきており、台湾製などは価格も国産品並です。
日本の古い工房では従業員数が平均すると数名足らずで、そのほとんどの職人さんが高齢なのに比べ、中国やタイなどの工場では数百名が働き、後発の利を活かし機械も最新型が導入されています。その生産力と開発のスピードは既に日本を上回っています。
安かろう悪かろうの時代から安くても精度の高くなったアジアの家具は瞬く間に日本の市場を席巻し、「世界の工場」となった中国製の価格が日本の基準価格になってしまいました。細部の出来は依然日本製が勝るものの、一見はほとんど変わらなくて安い輸入品が人気を博し、たちまち国産品は敬遠され、海外に工場を移転できなかったり、国産の強みを出せない多くの木工所が姿を消しました。
バブル期以降、そうしたグローバルな流れの中で多くの製造業だけでなく、卸業、小売店までが倒産、廃業に追い込まれていきました。ただ構造不況と言われる中でも、輸入家具(欧州家具などの舶来物を含む)を中心に販売している輸入業者や小売店は比較的好調です。
ある統計によると家具とインテリアの平均買い替えサイクルは7年と言われ、同じ耐久消費財である家電の倍です。これは糸物といわれるカーテンやカーペットなども含まれますので、テーブルやタンスなどの木工品は10年、いや20年サイクルでしょう。家電は100万円するテレビでも10年持つか持たないかですが、100万円の家具は100年持ちます。耐用年数が長くて買い替え需要が乏しい商品でありながら、単価が下がったために業界全体が一気に苦しくなりました。
かつてはご婚礼、ご新築といえば数百万の商いが期待できましたが、現在はその半分以下、首都圏では3分の一、5分の一に落ち込みました。現在はご婚礼家具の代名詞である婚礼箪笥や鏡台が売れなくなり、展示で置かない販売店が増えました。
こうした逆境の流れの中でも、最近首都圏を中心に従来型の「家具屋」ではありませんが、個人で木工を始める方(クラフト工房)や異業種からのインテリアへの参入があるのは少しの光と言えるかもしれません。これから次世代を担う若い人たちが少しでも家具、インテリアに興味を持ち、理解を深めてもらえたらと思います。